通所型の生活介護施設の運営や障がいを持つアーティストのアート制作活動を支援するNPO法人studio FLATさん。
今回は、studioFLATの成り立ちから、NFTマーケットプレイス VAI!ART や川崎市のアートイベント等を中心に NFTを活用するに至った経緯、そして今後の展望について、
studioFLAT理事長の大平暁(おおだいら さとる)さんにお話を伺いました。
ーstudioFLATが生まれるまで
絵画講師をやっていた中で福祉事務所での講師を行う機会があり、障がいのあるアーティストと初めて関わりました。私は漫画家のアシスタントのように、とある男性アーティストの指示に従って線を引いたり、一部の作画を担当しました。彼は細かいところまでとてもこだわりがあり、自分の描いたものが意図と合わないと修正液で消してしまうことも。最初は分かり合えていないなと感じていました。しかし、ある日自分が怪我をしたとき、彼が一番に絆創膏を持ってきてくれました。実は信頼が築かれていた、アートで繋がれていたのだな、と感じました。
そうして障がいのあるアーティストと作品を創っていく中で、とある著名な先生にアーティストの作品を見せに行く機会がありました。
当時、自分としては作品に自信があったけれど、世の中には通用しないのではないかと不安でした。もし先生に見せてもあまり響かないようであれば、これを機にやめようか、とも思っていたくらいでした。
すると先生から、こんな言葉をいただいたんです。
『この絵からは、あなたとアーティストさんとの関係が伝わってきますね』と。
そうやって褒めて頂き、ぽろぽろと涙が出ました。
これは絶対に続けなければいけないと決心し、その思いがstudioFLATとなり、気がつけば12~3年経って今日に至ります。
ー相手に寄り添った共同作業
studioFLATを開所して、多くのアーティストに参加してもらっています。その中で100%理解しながらコミュニケーションを取れる方は少ないので、最初はどうしたらいいか分からず手探りでした。結局、相手が何をしたいのか、どんなことを求めているのか。とにかく相手に寄り添うことを意識しています。それによって、アーティストの作品の質も変わります。
アートって1人で作成するイメージを持たれがちですが、いろんな人が関わって作品は出来上がるんです。
例えばプロデューサーのような人がアイデアを出したり、キュレーターの方がどこへ飾ると良いかアドバイスしたり、絵の師匠がいたりして、出来上がったアートが、ハンカチなどのグッズにもなって、多くの方へ届けられています。
アーティストと周りのスタッフで一緒に作っているんですね。
それが現場では当たり前なのですが、世間のイメージとは乖離があるかもしれませんね。私はこの共同作業をとても大事にしたいと思っています。
studioFLATによるNFT作品: MUSIC2022/2 阿部堅太【ABE KENTA】
ーNFTの可能性と展開
NFTには様々な可能性があると考えていて、時代を先回りしたチャレンジをしていきたいと考えています。
2022年春頃にVAIABLEさんからお声がけ頂き、7月にOpenseaに作品2点をNFTとして出品したのが最初のアクションでした。
その後、暗号資産以外に現金決済等も使えた方が良いということもあり、2022年9月以降はVAI!ARTへ作品を出品しています。
こうした取組は、支援してくれている企業や自治体など周囲の人々から既に問い合わせを受けるなど、大変注目されています。
その中の一つに、川崎市の市制100 周年を記念したアート事業「アートフォーオール」があります。100年先の未来の川崎を描く市民参加型のイベントを、2023年2月に武蔵小杉駅前でVAIABLEさんと一緒に開催しました。
予想を超える多くの市民の皆様に参加いただき、4つもの未来地図が作品として完成しました。
現在、本作品は全てNFT化して、市民の方が自由度高く使って頂けるようにWEBで公開しています。
ー今後ももっと多くのアーティストをフォローしていきたい
FLATに通うアーティストの中には、発語が難しい人も多いです。アートを通じた活動をしているけれど、まだまだ社会とのつながりが少ない方もいるので技術的にも、活動としてもさらに広げて、より多くのアーティストをフォローしていきたいです。
団体名にある通りフラットに、障がい者アートという線引きはあえてせず、アートとして見てもらえることを目指していますので、NFTアートという新しいツールを活用することで、実現が近づくのではないかと期待しています!
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※文中の記述は2023年2月インタビュー当時の内容です。